Vita TVで完了するSCEのソフトウェア路線への切り替え

PlayStation 4の国内での発売日や、PlayStation Vitaの新型発表などがあったけど個人的に一番目を引いたのはVita TVだった。 SCEにとっては初のゼロスピンドルの据え置き機で、Vitaプラットフォーム最後の梃入れ、Apple TVへの対抗手段で、下手をしたらPlayStation 4にとって最大刺客になるかもしれないハードウェアだと思った。

ハードウェアフェティッシュから自由になったVita TV

恐らく久多良木氏の趣味によるところが大きいと思うが、SCEと言えば光学メディアに拘りがあるメーカーだった。据え置き機としては初の光学メディアでのソフト供給がないモデルになった。ポータブル機でもVitaでは光学メディアを排してきたのである意味当然の流れではあるのだけど、Vitaでの無駄とも思えるインプット手段をばっさり切ったシンプルすぎるデザインと合わせて、物凄くあっさりしたハードウェアになった。ほとんど汎用品のSoCに近いメインプロセッサと合わせて、誤解を恐れずに言えば「台湾メーカーでも即作れそう」なハードだ。 Vitaでは独自プロセッサ路線は放棄してARMを採用して、PlayStation 4でも汎用プロセッサのアレンジ品をコアに据えてきた。それでもVitaは前背面のタッチセンサなど独自色があったし、PlayStation 4も主記憶をGDDR3にしたりと捻りがあった。しかし、Vita TVにはそれが感じられない。同じような構成のApple TVとサイズ的にさほど差はないし、電源も内蔵ではないようだ。もはや、Vitaのメモリを読み書きする部分以外はどこのメーカーでも作れる物だ。パッドも新規に作ったものではなく、既存のものがそのまま使えるという念の入れよう。 最近のスマートフォンを分解するとロジックボードの小ささに驚かされるので、バッテリも表示部も持たないVita TVの小ささもさほど新しさは感じない。

Vita プラットフォームへの梃入れ

Vitaとの互換性はあるので、これによって出荷台数を稼いでVitaのプラットフォームとして魅力を増して双方のセールスへと繋げたいところ。正直言ってVitaは全然売れていないので、これと新型Vitaが最後のチャンスじゃないだろうか。これでも立ち上がらないようならば独自ハードウェアを維持する価値がなくなる。 Vitaと互換性があると言っても携帯機と据置き機の差もあるし、タッチパネルが無いことのインターフェイスの違いもあるのでどの程度まで体験を維持できるのだろう。解像度もHDMI接続の1080pのモニタに出せるなら縦横それぞれ2倍ほどの差がある。整数比に近いのでハードウェアの補間だけで行くのだろうか。

対抗機

まずイメージしたのはApple TVだ。私も現行機の一つ前の720pしか出せないモデルを持っているが、これでiPhoneのゲームができれば良いのにと思っていた。実際には簡単なリモコンしかなく複雑なゲームをやるには無理があったし、コントローラ対応ゲームまで作るなら元々ゲームコンソールの方に利があるため簡単には実現できそうにない。 iTunesとの連携を除けば、機能面でVita TVはほぼ上位互換であるようだ。ゲームもできNASなどとも連携してインターネット上のコンテンツも表示可能。 Vitaとの互換性だけでは不十分と思ったのか対応ビデオサービスを多数用意している点も良い。商品紹介ページでもゲームより先にビデオが挙げられているぐらい。国内用としてはこれだけ用意できたら十分だろう。 広い意味ではChromecastなんかも対抗になるし、あまり良い話を聞かないがOUYAもコンセプト的に近い。わりとどこでも再生できるYouTubeが現時点で対応サービスに入っていないのが興味深い。Windows PhoneでのYouTube対応などでもGoogleは露骨に妨害してきたので、自社の製品に脅威と感じているとそのまま提供しない可能性もありそう。 OUYAと比較して対応ソフトの量が比較にならないのでこのまま潜在的な市場ごと完全に飲み込んでしまいそう。

PlayStation 4との関係

過去の資産流用はエミュレーションなどで実現しつつ安価で小型の据え置き機というコンセプトはPlayStation 4をぶつかりそう。少なくとも私は当面Vita TVでいいかなと思えた。PS3との互換性もないPS4で、PS4の能力を生かしたソフトが出揃うのは数年かかるだろうしその頃までエミュレーションで繋ぐならVita TVを買っていればいいのである。 投資単位が大きくなってしまったこともあり据え置き機のプラットフォーム立ち上げは年々厳しくなってきたと感じるが、横でこんなに安価なプラットフォームを見せられると益々厳しいのではないだろうか。

Lumia 625を買ったよ

MicrosoftNokiaの端末部門を買ったからというわけではないけど、NokiaLumia 625を買っておさわり中。Android端末とか新しいのを触ってもドキドキ感が無くなりましたしね。

良いところ

UIが滑らか。Windows Phone 7のころから基本デザインはそのまま踏襲してWindows 8のModern UIと同じようにフラットデザインが心地良い。操作開始から実際の処理完了までの時間は恐らくそれほど速くはないのだけど、UIでのインタラクションで待たされる感じが少ない。これはAppleの製品でも感じられるけど、UIのアニメーション効果がいやらしくない程度にあって好感が持てる。Androidとかだと切って回ることが多いのだけど。

日本語の利用は問題ない。Nokiaの端末には海外モデルであってもちゃんと日本語のロケールデータが完備されているようで、ロケールさえ切り替えれば普通に使えた。入力についても日本語キーボードのデータをダウンロードすれば日本語入力が可能。

電池の持ちがよい。新品を使っているのもあるだろうけど、電池の持ちは現在使っているGalaxy Nexusと比べても良いと感じた。

最低限のアプリは揃っている。アプリはWP7と互換性があるためか、とりあえずは困らない程度には揃っています。

など。公式アプリだったり、Microsoft自身が作っていたりするのもあるがあれが無いこれが無いというほどではない。

悪いところ

フォントが変。表示フォントはYu Gothicのようでおおむね綺麗。「骨」とか「海」のように明らかに字形が違うものを見たところ中華フォントではないと思われるのだけど、一部の部首がおかしいところがある。フォントデータがおかしいのか、レンダラの問題なのか、表示アプリ側の問題なのかは不明

地図はとにかく酷い。Nokiaの"HERE Maps"というのが標準アプリで入っているけど、国内のデータは全くダメ。WP7のときはBing Mapsのデータが使えて国内でもある程度実用性があったらしいのでむしろ後退してしまっている。これは国内出荷モデルでないので仕方ないのかもしれない。地図だけならばGoogle Mapsのデータを表示するための野良アプリが幾つか出ていて、少し前のブラウザ版よりちょっと使い易いぐらいの使い勝手を実現できる。ただし地図データはビットマップだし、Androidの純正クライアントと比べると機能面とビジュアル面でかなり見劣りする。

個々のアプリの完成度は実はそんなに高くない。上で一通り揃っていると書いたけど、完成度はやっぱり高くないように思う。デザインはOS標準のものと違和感がないように作られているが、Android版やiOS版のそれと比べると明らかに手抜きが目立つ。twitterクライアントではローカライズ時の問題と思われる語順のミスがあったり、Tumblrのクライアントでは他のプラットフォームで実現されている機能が落ちていたり。

アプリの品質が微妙であるというのはAndroid初期にもあった問題で、当時もGoogle純正アプリ以外はデザインも垢抜けておらず純正アプリで揃えざるを得ないという状況が長かった。Microsoft提供のアプリはやはりどれも良く出来ている。

この端末特有の問題としてカメラはあまり高画質ではない。Nokiaの最近の端末のカメラは良いという先入観があったためか、この端末のカメラはちょっと拍子抜けするぐらいの画質だった。7xx以上の端末であればレンズはカールツァイスだしもっと良いはず(私が買った625は廉価モデルです)。

その他

ブラウザはIEが入っていてそれなりに使える。素のIEなんて使うのは何年ぶりかという気もするけど、案外使える。レンダリングもモダンなブラウザ相当なのだろう、ちなみにAcid 3では100点満点。スマホ版の表示に切り替わるサイトだとWebkitベースのブラウザと大差ない。

あたり前の話だがGoogleのサービスとはあまり相性がよろしくない。Googleはネイティブアプリをほとんど提供していない(申し訳程度の検索アプリがあるだけ)し、Microsoftが作ったYouTubeのアプリはサーバ側でブロックされている始末だ。Androidにどっぷり漬かっていると空気のように使える各種サービスが使えないのは色々と辛い。Microsoftに相当するサービスがない機能については野良アプリに期待するしかない。

結局スマートフォンってサーバサイドも含めたプラットフォームなので、いいOSといい端末が出来れば使えるという物ではないという話ですね。

LTEはBand 3, 7, 20に対応している。国内だと3しか掴まないはずか。キャリアサーチするとSoftbankE-mobileが4Gを見つけてくる。ドコモは10月以降にBand 3でのLTEサービスを正式に開始するそうなので、それ以降で掴む可能性はある。

Androidは解像度のバリエーションが豊富でハイエンド端末は非常に高解像度のものもあるが、Windows Phoneでは種類がかなり限定的されている。この機種も800 x 480しかない。カタログスペックほどは差を感じないが、最新のフルHD液晶のAndroid端末と比較するとやや物足りない感じもある。

まとめ

国内で出荷されていない海外端末だけど、案外問題なく使える。拍子抜けするほど。

日本でちゃんと出すなら致命的な欠点である地図は直すだろうしアプリも増えるだろうから、出てすぐに実用になる水準だと思った。ただし、Googleのサービスに全てを委ねている人は移行が大変かもしれない。

この端末固有の話としては、やっぱり色々と安物な薫りがするのでWindows Phoneとしてちゃんと使いたいならもう少し上位のモデルがお薦めです

 

スティーブ・ジョブズは何が偉大だったのか

結局は「技術的に優れているかどうかよりも、安価で利益率の高い製品を作ること」が重要であるというドクトリンに基いてそれを成功させたということが偉大なんじゃないかと。

恐らくNeXT時代に技術的に優れていて高価で美しい製品を出したけど成功しなかったことの反省から、Appleへの復帰後に普及価格帯で製品を出す事に拘りがあったのだと思う。技術的オリジナリティという点では必要に応じてあっさり捨て(Intel CPUの利用とか)、安価で(iMacなど)、利益率の高い(ラインナップの厳選、Apple Store、iPhoneでのキャリアとの契約)事業に集中したのが良かったのだろう。

狂乱が終わった今にして思えば、初期のiMacは酷い物だったよね。値段は安かったけどモニタの品質は低いしマウスは使いにくいし。あれは当時に醸成されていた空気が無ければそれほど売れなかった物ではないと思う。その当時から空気を作るのが上手かったのだろう。

次のiPhoneでは2モデルになって廉価モデルが出るらしいというのは、わりとジョブズの路線を踏襲しているのではないかと思った。

現在の後知恵を全て知った上で、同じような経営ができるかと言われたらもちろん無理だけど

 

お約束ごと

パシフィック・リムを観てつくづく私は特撮的約束ごとに対して受容性がないなと実感した。

特撮に限らずアニメなどでもそうだけど、普段見ない人間からすると奇異に映る約束ごとというのが非常に多いのだなと思った。それの多くは不合理だったりするので何故そうなっているのかを理詰め考えても仕方がないことがある。あるいはその理由が作中の理由によらずメタな理由によることがある。

  • 怪獣に対しても近代兵器は通用しない。そして接近戦を行なってしまい、壊される
  • 巨大ロボットは人型である
  • ロボットに搭載された火器は近代兵器のそれと違って通じる
  • パイロットは実機に搭乗している必要があり、リモート制御ではいけない
  • 変なスーツを着て操縦する

などなど。アニメだって人型ロボットに関しての不合理さは作品の中で色々と理屈をつける物もあるが、格好いいからとかおもちゃが売れるから以上の理由はほとんどない。

特撮物を子供のころから継続的に視聴していたら不合理さを感じる前にあたり前のこととして受容できるのだろうけど、私などは特撮を見なくなっていた時期が長いためそのお約束ごとがどうにも気持ち悪い。

パシフィック・リム観てきた

映画を観てから出社というダメ社会人行為の末、鑑賞。なんだか早めにロードショーが終了するという話も聞こえてきたしね。

観たのは3D版の吹替。洋画は吹替えよりは字幕派だったのだけど、本作については吹替えが良いと聞いていたので敢えて吹替えで。夏休みの平日とはいえ、その日の初回だったためか入りはあまり良くない。20名弱といったところかな。

実は3D映画を劇場で観るのは初めてだった。しかし、光量が下がるし全然良いものだとは思わなかった。下手に3D上映を前提すると劇中でのレイアウトも奥行きを意識したものとならざるを得ず、2Dソフトとして売ったときなどにデメリットにしかならないんじゃないかな。ブームで終わると言われつつなかなか終わらないけど、後年になって「この時期の映画はみんな不思議な構図だね」みたいな笑い話になりそう。

肝心の3D表現についても奥行のある構図にすることで相対的な前後関係は表現できるけど、被写体単体の立体感は劇場で観てもさほど感じられなかった。前景と背景の間に人物が立って演技しているような場面では、書割の前に立ててある看板が動いているような感じ。WXIIIと同時上映されたミニパトが人形劇のようなパタパタアニメとして作られていたが、そのような感じな立体感だった。

閑話休題。映画本編は冒頭でナレーション付き映像で舞台設定を全部説明してしまうというお手軽な流れ。それ以降の流れはウェブでの感想でよく見る通り筋は単純で、ロボットと怪獣がどつき合うだけ。

声オタ的には主役が杉田さんで、ヒロインが林原めぐみさん、ライバルが浪川大輔さん。脇が玄田哲章さん、古谷徹さん、池田秀一さん、千葉繁さん、三ッ矢雄二さんなどいずれも実力派、聞いていて破綻がない。古谷さん、池田さんについてはどうしてもアムロ、シャアのキャライメージが強くて、「何やってもアムロ」「何やってもシャア」と見做されていたのか、なかなかいい役が来なくてもったいないと思っていた。池田さんはシリアスなキャラということもありちょっとシャアが入っていたけど、古谷さんについては久しぶりにコミカルな演技を聞いた気がする。

あとから気付いたがWikipediaの記述がロードショー中の映画のわりには充実している。ネタバレが過ぎるが、設定や筋を楽しみにして行くものではないので別に問題ないか。

1年ぐらい前からKotakuで各国のイェーガーのイメージを公開したりしてプロモーションしていたので、てっきりそれぞれに見せ場があると思っていたら単なるやられ役だったのが残念。具体的には中国とロシアのイェーガー。前者は三人乗りで三人兄弟が搭乗していたり、後者は男女のペアだったりでいかにもドラマを転がす余地があるような設定にしておきながら、あっという間に退場。司令官にまつわる描写を外してでもこっちを描いて欲しかった。

二人乗りのシステムというのは正直良く分らなかったのだけど、コックピット用のスーツを着てパイロットがシンクロしながらドツくモーションをしている格好はちょっと良いと思ったので、監督はこの映像を撮りたかったんじゃないかと思った。