2050年のメディア、読了

面白いと評判だったので読んだ。タイトルの「2050年の」というのはあまり意味がなくて、実際には過去30年ほどの新聞とインターネットについて勝たれており、2050年に向けた未来の話ではなかった。過去を知って未来を語ろうということだけど、それは本書の外の話なのだろう。それを差し引いてもちゃんと取材したノンフィクション物として面白かった。ページをめくるごとに全面広告を見せられたりしない情報源として「本」が案外便利である、などと最近はジョークのネタにされたりする。この本もまさにちゃんとお金を出して買った本の良さを実感する。本書の内容もどうやって情報に適価で消費者に届けるのかという話なので、通じるものがある。

個人的な関心事としてここ数年、ちゃんとした情報にはお金を払っていくべきだろうという思いがある。とことんインターネットは情報のマネタイズが不器用なメディアだが、だからこそ消費者としてちゃんと情報にお金を払って行くべきだろうという考えが日増しに強くなっている。先日もインターネットで新聞社の有料会員になるべく各社のプランを比較などしていた。そのときにも読売新聞は特に保守的なサービスラインナップだと思ったが、この本はその読売新聞にフォーカスしている。あとは有料化が軌道に乗っている日経新聞とヤフージャパンが主軸になっている。

私は野球に興味がないので途中で語られる清武の乱の話などは唐突すぎると感じた。読売新聞と巨人が密接な関係なのは理解できるが、あれって必要でしたかね。私よりも若い世代はもっと野球に興味がある人が減っているので、紙の新聞以上に退潮傾向になっていくのではないか。

ニュース自体のインターネットでのマネタイズ自体は90年代から色々と試みられている。この分野での草分けであるImpressですら全く成功しておらず(最初期のInternet Watchが有料のメルマガをやっていたのはどれぐらいの人が覚えているだろうか)、サイトは年を追うごとに広告まみれになっている。あの状態が健全とはとても思えないんだよなぁ。日経の取り組みは少し未来を感じるけど、ストレートニュースは本当にどうすりゃ良いんでしょうね。ストレートニュースを記事にする機能は誰かが担う必要はあるはず。

マウスピース歯列矯正をしていた

矯正自体は終わって、随分経過しているのだけど記録の意味も込めて書いておこう。この記事はアフィリエイト記事ではない。

歯列矯正をやっていた。マウスピース矯正、固有名詞としてはインビザラインというやつである。自分ではそれほど歯並びが悪いという認識はなかったのだが、アイルランドに住んでいたときなど欧米人と直接顔を合わせる機会が多かったので彼らのお金のかかった歯を見ていると自分ももうちょっと改善したほうがいいかもしれないと思ったのが動機だった。日本に帰ってきてから生活が落ち着いてから近所の歯科医で歯列矯正をお願いしてみた。その歯科に掛かる前にも別の歯科で定期検診のついでで歯列矯正をやりたいのだがと相談したが「(年齢的にも)困ってないならやらなくていいよ」という感じでスルーされたが、今回のところはインビザラインの認定医がいるだけあってやる気を出してくれた。

インビザラインとは簡単に言うとマウスピースによる歯列矯正である。3Dプリンタで出力されたマウスピースは最短で1週間単位で交換してくことで、一度に大きく動かす必要がないので痛みが少ないというのが売りである。通常の金属等による矯正ではこまめに受診したとしても数週間以上ごとになるので、その分の移動量を一気に力をかけて動かすことになる。歯は通常でも完全に固定されているわけではなく、0.25mmぐらいの余裕があるそうでその範囲内で動かしていくと痛みがないと説明された。実際には1週間でその分の移動が完了しないまま次に進むと痛みはそれなりにあった。

最初は腔内を3Dスキャナで撮影して、その結果に基づき計画を立てる。コンピュータ上のシミュレーションで現在の状態からどのように歯を動かしていくのかを説明してもらえる。私の場合は30週弱で完了する計画だった。

最初の1枚のマウスピースはとりあえずスキャンした結果に基づき作っただけのもの。これをつけて違和感に慣れる必要がある。マウスピースは食事のとき以外は常時つけていることを求められる。24時間のうち20時間ぐらいつけているのが理想だそうだ。もちろん寝ているときもだ。口に何かを入れたまま寝るというのは普段の生活では滅多にやらないため、最初は違和感がすごくて寝付きが悪かった。

その時の仕事はわりと人前で話をする場面があったが、マウスピースをつけたままだとかなり話しづらい。なるべく着けたままで喋るようにしたが、どうしてもというときは外して喋ることもあった。在宅勤務が多い時期だったので、取り外しも問題がなかった。オフィスだと人目があるので大変だろう。

最初のマウスピースで問題なければ、次は歯にアタッチメントという突起を付けてもらう。樹脂製の小さい突起でマウスピースが歯を動かすときの取っ掛かりとなる。どこにどのような形状のアタッチメントを付けるかはシミュレーションで計算されているようだ。アタッチメントの形状もその場で作るのではなく工場で出力されているのを取り付けしているみたい。小さい突起を接着剤で計画通りに設置していく、力がかかりそうな場所なのにちゃんと固定されるのは接着剤が優秀なのだな。1個外れてつけ直してもらったことがあるが、大半は最後まで問題なかった。歯の外側に突起ができるので、口の中を怪我するのではないかと思ったが食事のときなどでも特に支障はなかった。普段はその上からマウスピースを着けるのでそちらの違和感の方が強い。

アタッチメントを付けてからはその部分が凹んだ専用のマウスピースをつけていく。私の場合は全部で30個弱あったのでまずは10週分ほど渡された。各マウスピースは当然カスタムメイドで、それぞれが少しずつ歯を移動させるように専用に出力されたものだ。時系列で並べると歯を移動させていく様子がわかる。 マウスピースは痛みのない範囲で動かすといっても10個分ともなれば数cmは動かせそうだが、実際には回転が絡むので水平移動はそれほど大きくなかった。

食事のときは外して食べるのだけど、飲み物はそのまま飲むことになる。マウスピースは染色しやすいので色の強い飲み物はなるべく飲まないようにと言われていたが、私は面倒なので普通に飲んでいた。案の定微妙に色がついてしまったが、各週のマウスピースは使い捨てなので無視することにした。

一週間で次のマウスピースに切り替えていくので、切り替える曜日を決めてその曜日になったら次のマウスピースを開けて切り替えるというのをひたすら続ける。本当は歯の動きが悪いときには期間を少し伸ばすのが良いらしい。私は早く終わらせたかったので7日間で確実に次に進めていた。その結果、前述の通りときどき歯の痛みは発生した。朝歯がじんわり痛くて目が覚めるということもあった。

規定の枚数を全部使い切ると続きのマウスピースを貰いに行き、同時に検診をする。それを繰り返して半年ちょっとで終了した。 最後にアタッチメントを取り外して保定用のマウスピースを作ってもらう。矯正が終わっても放置しておくと元の状態に徐々に戻ってしまうためである。常時つけておく必要はないが、寝ている間はつけておくように言われる。

歯の移動自体は問題なく進んだが、私は寝ている間に噛みしめる癖があるためマウスピースにより歯が沈み込むという問題があった。マウスピースを着けた状態での沈み込みは奥歯がより強く影響を受ける。そのためマウスピースをしていないときの上下のかみ合わせが前歯のみ当たり、奥歯同士は触れ合わないという形になった。これはよくある症状のようで、前歯のみの保定具も作ってもらった。しばらくはそれを着けていた。この症状はその後慣れてしまったのか普通のマウスピースを着けて寝ても発生しなくなってきた。

すべてが終わってから最初の週に作ったマウスピースを見ると歯並びがぐちゃぐちゃだったことが実感できる。自分では少なくとも前歯に関してはそんなに酷くないと思っていたが、今とは比べ物にならない配列だった。当然そのマウスピースは今はもう着けられない。外からは見えないものの奥歯の並びに問題を感じていたが、そこもかなりマシになった。次はホワイトニングを行う予定である。

AIはコンピュータ業界にとってどれぐらいの変化か

AIはインターネットと同じぐらいのインパクトがあると思っている。

インターネットの登場前後でコンピュータはその立ち位置を大きく変えた。スマートフォンなどがあって初めて成立する形態のコンピュータだし、PCのソフトウェアでもインターネットの影響を受けていないソフトウェアを探すのが難しい。影響の程度はアップデートをネット配信するだけから、インターネットへの接続が前提の薄いクライアントソフトから様々である。ただ、コンピュータの使い方と形態を決定的に変えた。AIも同程度の変化をもたらすとしたら、コンピュータの使い方を決定的に変化させる予感がある。

インターネットの一般への普及が90年代半ばぐらいから開始されたとすれば、30年ぶりぐらいの大きな変化である。現代のインターネットの普及度合いや使い方は普及当初に予想されていた内容とはかなり乖離があるように思う。当時からウェブブラウザが主力であったけど、今は廃れたアプリケーション(NetNewsやらGopher、Archie、Castanetなどなど)による挑戦もあった。動画配信がいずれ実用化するという予想はあったものの、ユニキャストで動画をばら撒くことがこんなに一般化するとは思わなかったし技術に詳しい人ほど悲観論を唱えていた。技術的課題は普及することのパワーで解決してしまうものである。AIも様々なアプリケーションがチャレンジしているが、実際にはその少数のみが生き残って成長していくのだろう。今は普及初期特有の無秩序はいずれ収まり、洗練されていくはずだ。残った枝は力強く技術的課題を解決していく、20年ほど前に見た光景である。

The Computer Chronicles というアメリカの古いテレビ番組が面白い

タイトルのままなんだけど、The Computer Chronicles というアメリカの公共放送(PBS)で放送されていた番組が面白い。番組事態は 1983年から2002年まで放送されていた。つまり 20年以上前に終了済みである。現在は Internet Archive 経由で YouTube の専用チャンネルにアップロードされており、ほぼ全編が見られる。 www.youtube.com 80年代前半といえば、PC はあったが MS-DOS の初期リリースがされたばかり(1981年)で実用的な用途としても PC が使えるようになっていった時期でもある。

Intel 386 についての特集回では Unix が動くことをデモするために複数のコンソールからログインしてみたり。PC Unix はその後の LinuxFreeBSD が出るまであまり普及しなかったという認識なのだけど、結構期待されていたのだな。Intel の担当者が最後に AI についての期待を語っているのは現代と変わりがない。実際にその後の影響を考えると宣伝は過大ではなかった。 www.youtube.com

93年には早くもインターネットが取り上げられており、日本でのメディア露出よりも1年ぐらい早いのではないか。さすがにこの時期のアプリケーションは Gopher とかなので時代を感じる。 www.youtube.com

93年には Digital Photography も特集していた。「今後はデジタル写真が重要になる」と熱く語られていたが、予想よりは遅かったかもしれないが実際にそうなった。直接撮れるデジタルカメラはかなり希少で画質も十分ではなかったので、Photo CD などが使われていたようだ。QV-10 よりも前の時代だったしね。PhotoShop で画像を編集する様子などを見ていると30年前からさほど変わっていないなと感じる。 www.youtube.com

90年代後半はもちろん Windows が普及していった時代だが、Windows 98 の特集回で同時に Linus のインタビューを行っているのは先見の明がある。98年にはすでに IBM とかが OSS にベットしていたので、既に勢いはあったがまさか世界中の携帯の半分以上に搭載されるとは思っていなかっただろう。あと Linus がまだ若い www.youtube.com

84年に前回(あるいは前々回)の AI ブームも取り上げている。「40年後ではデータ量と計算量でぶん殴って解決したよ、そんでグラフィックチップ屋さんが大儲けしているよ」と冷やかしたいところだが、スタジオゲストに John McCarthy が出てくるあたりが侮れない。 www.youtube.com

MC は Stewart Cheifet というジャーナリストの方が行っている。Co-host として専門家の Gary Kildall も居たもののスタジオでのやりとりを見ていると本人も技術を理解して質問していたと思う。現代よりも専門性が高く、動きも激しかった時代に長きに渡って番組を続けられたものだ。 日本でもコンピュータをテーマにしたテレビ番組がいくつも有ったのは知っているが、このような形でアーカイブされているのだろうか。

Fire HD 10が更新された

昨日のイベントでひっそりと Fire HD 10 が更新されていた。

Fire HD 10 は2017年から外形はほぼ変わっておらず、2年ごとに律儀にスペックを更新している。画面は10.1インチの1920x1200でほぼ固定。

今年の更新ポイントはSOCの更新とそれに伴うパフォーマンスの向上だろう。地味にOSのバージョンも更新された。ただ、メモリについては3GBモデルのみとなっており、4GBモデルが廃止されたようだ。4GBモデルはキーボードをつけてOffice 365を使うことを想定していたので、Fire Max 11がその役目に割り当てられたため不要になったのだろう。

世代 2023 13th 2021 11th 2019 9th 2017 7th
SOC MT8186A MT8183 MT8183 MT8173
CPU 2xA76@2.05 GHz, 6xA55@2.0 GHz 4xA73@2.0 GHz, 4xA53@2.0 GHz 4xA73@2.0 GHz, 4xA53@2.0 GHz 2xA72@1.8 GHz, 2xA53@1.4 GHz
RAM 3GB 3GB/4GB 2GB 2GB
Power USB-C USB-C microUSB microUSB
OS Fire OS 8 Fire OS 7 Fire OS 7 Fire OS 5

Amazonは自社デバイス細かいスペックを公開してくれているのでありがたい。更新ペースも読みやすいので、どのセールのタイミングで購入するべきかの自己判断もやりやすい。

 

キーボードのサイズについての整理

キーボードのサイズとキーの数と対応関係がパッと出てこないことがあるので表にした

呼び方(通称) キーの数 割合 テンキー ファンクションキー カーソルキー 数字キー 記号キー 備考
フルサイズ 108 100% ある ある ある ある ある
テンキーレス 86 ない ある ある ある ある
66キーボード 71 66% ない ない ある ある ある 65%ともいう場合がある
60キーボード 63 60% ない ない ない ある ある HHKBの模倣品
45% 48 45% ない ない ない ない ある
30% 31 30% ない ない ない ない ない

個人的には66キーボードあたりが好きかな。テンキーとファンクションキーは滅多に使わないのでない方が小さくなるので良いし、カーソルキーなどは一部の操作で使うのでないと困る。それ以下は見た目は好きだけど、実用性の点での下限という感じ。多分これは個人差がある。

これ以外にももちろんバリエーションはもっとあります。

参考

帰国してます。

1年と少し前にこんな記事を書いていてましたが、今は日本に帰国しています。

kanamono.hatenadiary.jp

元々2年をめどに現地に引っ越していたので、当初の予定より少し短い程度でしたが日本に帰ってきました。

今はインターネットで大半の情報を受け取るので、日本にいても海外にいても実は情報については大差なかったなというのが感想です。Netflixとか映像配信サービスと一部のニュースサービスはIPアドレスによる制限をしていますが、それもゴニョゴニョすれば普通に見れました。一方で、インターネットがなかった頃の海外居住というのは大変だったのだろうというのは容易に想像できます。現地の大使館とかが頼られていたのもよくわかる。

物に関しては通販が発達しているとはいえ、入手までの手間や時間にはやや差があるという印象です。大半の物については現地調達に切り替えできましたが、いくつかはできませんでした。例えば、整髪料。そんなにオシャレさんでもないので髪は適当なのですが、現地で調達した整髪料はどうもしっくりこなかったので一時帰国のタイミングで半年分ぐらい買って帰るというのをやっていました。

食事はもっと苦労と思っていましたが、全く苦労しませんでした。100%現地の食事でも苦労なく過ごせました。日本に帰ってきてから炭水化物を取りすぎてお腹の調子が悪いぐらいです。日本で生まれて日本の食事ばかり撮ってきたので、お腹がゆるいのは自分の内臓が弱いからだと思っていましたが実は日本食が原因だったと切り分けできたのは収穫でした。とはいえ、日本で日本食を食べないわけにもいかないのですが。

あとは、国外に住んでいると「出羽守」的発言をしたくなるという誘惑が強かったですね。しないように心掛けていましたが、何度かはしてしまった気がします。国外に住んでいるのだから、現地の言葉で現地の話題を会話すればいいんでしょうが、結局日本の話題を口にするということは馴染めなかったのだなと思います。これは出羽守発言をする人への批判ではありません。