スティーブ・ジョブズは何が偉大だったのか

結局は「技術的に優れているかどうかよりも、安価で利益率の高い製品を作ること」が重要であるというドクトリンに基いてそれを成功させたということが偉大なんじゃないかと。

恐らくNeXT時代に技術的に優れていて高価で美しい製品を出したけど成功しなかったことの反省から、Appleへの復帰後に普及価格帯で製品を出す事に拘りがあったのだと思う。技術的オリジナリティという点では必要に応じてあっさり捨て(Intel CPUの利用とか)、安価で(iMacなど)、利益率の高い(ラインナップの厳選、Apple Store、iPhoneでのキャリアとの契約)事業に集中したのが良かったのだろう。

狂乱が終わった今にして思えば、初期のiMacは酷い物だったよね。値段は安かったけどモニタの品質は低いしマウスは使いにくいし。あれは当時に醸成されていた空気が無ければそれほど売れなかった物ではないと思う。その当時から空気を作るのが上手かったのだろう。

次のiPhoneでは2モデルになって廉価モデルが出るらしいというのは、わりとジョブズの路線を踏襲しているのではないかと思った。

現在の後知恵を全て知った上で、同じような経営ができるかと言われたらもちろん無理だけど

 

お約束ごと

パシフィック・リムを観てつくづく私は特撮的約束ごとに対して受容性がないなと実感した。

特撮に限らずアニメなどでもそうだけど、普段見ない人間からすると奇異に映る約束ごとというのが非常に多いのだなと思った。それの多くは不合理だったりするので何故そうなっているのかを理詰め考えても仕方がないことがある。あるいはその理由が作中の理由によらずメタな理由によることがある。

  • 怪獣に対しても近代兵器は通用しない。そして接近戦を行なってしまい、壊される
  • 巨大ロボットは人型である
  • ロボットに搭載された火器は近代兵器のそれと違って通じる
  • パイロットは実機に搭乗している必要があり、リモート制御ではいけない
  • 変なスーツを着て操縦する

などなど。アニメだって人型ロボットに関しての不合理さは作品の中で色々と理屈をつける物もあるが、格好いいからとかおもちゃが売れるから以上の理由はほとんどない。

特撮物を子供のころから継続的に視聴していたら不合理さを感じる前にあたり前のこととして受容できるのだろうけど、私などは特撮を見なくなっていた時期が長いためそのお約束ごとがどうにも気持ち悪い。

パシフィック・リム観てきた

映画を観てから出社というダメ社会人行為の末、鑑賞。なんだか早めにロードショーが終了するという話も聞こえてきたしね。

観たのは3D版の吹替。洋画は吹替えよりは字幕派だったのだけど、本作については吹替えが良いと聞いていたので敢えて吹替えで。夏休みの平日とはいえ、その日の初回だったためか入りはあまり良くない。20名弱といったところかな。

実は3D映画を劇場で観るのは初めてだった。しかし、光量が下がるし全然良いものだとは思わなかった。下手に3D上映を前提すると劇中でのレイアウトも奥行きを意識したものとならざるを得ず、2Dソフトとして売ったときなどにデメリットにしかならないんじゃないかな。ブームで終わると言われつつなかなか終わらないけど、後年になって「この時期の映画はみんな不思議な構図だね」みたいな笑い話になりそう。

肝心の3D表現についても奥行のある構図にすることで相対的な前後関係は表現できるけど、被写体単体の立体感は劇場で観てもさほど感じられなかった。前景と背景の間に人物が立って演技しているような場面では、書割の前に立ててある看板が動いているような感じ。WXIIIと同時上映されたミニパトが人形劇のようなパタパタアニメとして作られていたが、そのような感じな立体感だった。

閑話休題。映画本編は冒頭でナレーション付き映像で舞台設定を全部説明してしまうというお手軽な流れ。それ以降の流れはウェブでの感想でよく見る通り筋は単純で、ロボットと怪獣がどつき合うだけ。

声オタ的には主役が杉田さんで、ヒロインが林原めぐみさん、ライバルが浪川大輔さん。脇が玄田哲章さん、古谷徹さん、池田秀一さん、千葉繁さん、三ッ矢雄二さんなどいずれも実力派、聞いていて破綻がない。古谷さん、池田さんについてはどうしてもアムロ、シャアのキャライメージが強くて、「何やってもアムロ」「何やってもシャア」と見做されていたのか、なかなかいい役が来なくてもったいないと思っていた。池田さんはシリアスなキャラということもありちょっとシャアが入っていたけど、古谷さんについては久しぶりにコミカルな演技を聞いた気がする。

あとから気付いたがWikipediaの記述がロードショー中の映画のわりには充実している。ネタバレが過ぎるが、設定や筋を楽しみにして行くものではないので別に問題ないか。

1年ぐらい前からKotakuで各国のイェーガーのイメージを公開したりしてプロモーションしていたので、てっきりそれぞれに見せ場があると思っていたら単なるやられ役だったのが残念。具体的には中国とロシアのイェーガー。前者は三人乗りで三人兄弟が搭乗していたり、後者は男女のペアだったりでいかにもドラマを転がす余地があるような設定にしておきながら、あっという間に退場。司令官にまつわる描写を外してでもこっちを描いて欲しかった。

二人乗りのシステムというのは正直良く分らなかったのだけど、コックピット用のスーツを着てパイロットがシンクロしながらドツくモーションをしている格好はちょっと良いと思ったので、監督はこの映像を撮りたかったんじゃないかと思った。